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9.女装と女性の狭間に立って

「楓さんは女性なのに、なぜ女装っ子さんの気持ちがわかるのですか?」そのように聞かれることがしばしばございますが、答えは簡単『女装っ子さんの立場に立って常に考えているから』とお答えしています。そのようなお答えが出来るのも、私が作り出したいと常々思っている世界と女装世界のあいだには、重なっているところが極めて多いからでもあります。

誰にでも、もちろん私にも、もう一人の自分になりたいと願う瞬間はあります。男性に比べると、女性はその点が恵まれています。お衣装のジャンルが多いですし、メイクも普段のと変えれば別人になることは意外と簡単にできます。女性は別人間になることで日常生活のストレスからの開放を実感している、とすら言えましょう。以前から私は、メイクを工夫すれば別人間として楽しみを簡単に広げられることに気づいていました。女装をしてみたい、と思っていてもできる機会がない方に手を差し伸べたい。何よりも女性として世界を見ることが素晴らしい発見に繋がり、男性としての普段の生活にも潤いを与えてくれることを知って頂きたいと思っています。

メイクをして女性のお衣装を着れば、女装は誰にでもできます。しかしせっかく女性になるのであれば、どこから見ても女性に見える完璧な姿を私は求めます。それは、スキがある状態では(ばれたらどうしようなど)心に不安が生まれ、別人である時間を思う存分楽しめないからです。かといって、男性にいきなりメイクをしろといわれてもできないもの。そこで、メイクに長けている経験豊富な女装メイクアップアーティストの登場となります。私達メイクアップアーティストは、技術を磨き女装っ子さんの立場になって夫々のメイクのあり方を考えます。特に、外出をするとなると自分自身が女装っ子さんになった気持ちになって町を見て、適切なアドバイスが出来るよう常に心がけております。

また、女装っ子さんの考えだけでは社会に溶け込むことはなかなか難しい…、それは理想と対立する現実があるからです。現実を見るためには女性の立場で物事を捉え、その上で女装っ子さんの立場で物事を考える。私達はそのようにして理想と現実の程よく重なり合った世界を演出するのです。女性の心と女装っ子さんの心の両方を生かすように物事を考えると、より快適に女装ライフを過ごすためにはどうすればよいのか、が見えてきます。私が見つけたヒントを少しでも多くの方に伝える、それが私の務めです。

しかし女性である私がなぜ女装の世界に魅了されたのか、女装でなければならなかったのか…それは、私が生きてきた大切な思い出の数々にあります。機会がありましたら、物語のページを開くことにしましょう。